教育情報 2021年度(中学)・2022年度(高校)学習指導要領改訂の背景と「観点別評価」の考え方
コンピテンシーベース(資質能力型)の教育を目指して

リリース日:2021年2月26日

2021年度(中学)・2022年度(高校)学習指導要領改訂の背景と「観点別評価」の考え方
コンピテンシーベース(資質能力型)の教育を目指して

中学校 高等学校

文部科学省の学力調査、高大接続、高校教育改革などの諸委員を歴任する長塚篤夫先生(一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長、順天中学校・高等学校校長)に、学習指導要領改訂で国が目指す教育についてうかがいました。

「受験知」を脱し切れない日本の高校への問題提起高校普通科再編

普通科が7割を占める日本の高校では、「良い大学に入ることが良い」という価値観に縛られています。現在、文部科学省では高校の普通科再編が議論されていて、高校生に主体的な学びを促すことを目指しています。

大学に合格することが目的となっている中高の教育を変えようという議論は、長年にわたり続けられています。大学受験のあり方も中等教育も、もはや本当に変わらなければならない時期を迎えていると思います。

コンテンツからコンピテンシーへ資質能力型の教育とは

これからあるべき教育とは、「何かを知っている」だけではなく、「知っている知識を使って何ができるか」を考える教育です。例えば「ボランティアをしました」「英検〇級を取得しました」で終わらずに、その結果、自分は何ができるようになったのか、どんな資質を身につけたかを問う教育です。

このような教育はコンピテンシー(資質・能力)ベースの教育と呼ばれます。すべての子どもたちにとってコンピテンシーベースの教育が必要であることを描いた有名な風刺画があります。アインシュタインの言葉をもとに描かれたもので、サルやペンギン、ゾウ、魚などの動物に向かって試験官は言います。「君たちには公平にテストをするために同じ問題を出す。さあ、あの木に登ってごらん」と。木登りが得意な動物も、不可能な動物もいるのに、テストは「木登り」という画一的なものです。それでは彼らの資質や能力は測れません。そのような20世紀の教育から脱皮しなければならないと、アインシュタインは告げています。

企業が求める資質と学校教育の乖離

企業では2000年頃から、採用選考の最終問題に、次のような出題をしているといいます。「富士山を動かすにはどうすればいいか」「五大陸のうち1つなくすとすれば、どれをなくすか」。つまり、正解のない問題に解決策を見出せる人材を探すために、企業は膨大な費用と時間をかけているのです。また、企業が新入社員に求めるものを見ていると、「学校の成績」や「語学力」などは、それぞれわずか5%程度で、「コミュニケーション力」が最も高く80%以上を占めています。コミュニケーション力とは、主体性を持って人と協働できる「資質」のことです。

コンピテンシーベース(資質能力型)の教育を目指す

OECDでは2000年以降にPISAテスト(国際的な学習到達度に関する調査)を始めました。日本の高校生は、文系・理系の理解力に関するテスト結果はトップレベルですが、例えば科学に対しての興味・関心は極めて低い傾向にあります。科学の知識はあるのに、面白いと思って取り組んではいないということです。その解決に適しているのが、探究型の教育なのですが、「どの知識を学べばいいのか」という学習範囲のコンテンツや、「アクティブ・ラーニングをすればいいのか」「探究型学習をすればいいのか」という方法論に留まっているのが現状です。大事なのは教育コンテンツやメソッドではなく、「その取り組みの結果、何ができるようになったのか?」という資質や能力の向上です。

学習指導要領の改訂で資質や能力を測る「観点別評価」を導入

そこで今、大きな課題となっているのが「資質や能力をどう測るか」です。学習指導要領の改訂に伴い、2021(令和3)年度からすべての中学で、「①知識・技能」「②思考・判断・表現」「③主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点で「観点別評価」となります。

高校での導入は2022(令和4)年度からです。テストの点数のみでは測ることができない3観点ですから、ルーブリック評価(注)のような評価方法を使う必要があります。ルーブリック評価は、さまざまな資質・能力の評価に使われる、成果を「〇〇ができる」と
いった評価段階で評価する方法です。

子どもの発想は本来自由です。だからこそ、子どもの未来には可能性があります。それをどう伸ばすのかが、コンピテンシーベースの教育なのです。

注)ルーブリック評価……学習到達状況の評価方法。パフォーマンスの特徴を示す評価基準を「記述式」で記し、より具体的に、段階的に評価する評価方法。

※この記事は『私立中高進学通信』2020年11月号に掲載された内容をもとに制作されています。先生方の役職などは取材当時のものです。

長塚篤夫先生プロフィール

長塚篤夫(ながつか あつお)先生
1951年、茨城県生まれ。順天中学校・高等学校校長。1975年に順天高等学校教諭となり、1985年より同校教頭、1999年より現職。
一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長、日本私立中学高等学校連合会常任理事。文部科学省の学力調査、高大接続、高校教育改革などの諸委員を歴任。