教育情報 withコロナ時代の学級運営:
2020年コロナ禍の中で新入生を迎えた学校の実践例

リリース日:2021年1月25日

withコロナ時代の学級運営:
2020年コロナ禍の中で新入生を迎えた学校の実践例

中学校 高等学校

さまざまなツールを使い、
課題やテストもオンラインでていねいに指導

コロナ禍でオンラインによる学びを検討する中、東京都千代田区の私立・共立女子中学高等学校(以下共立女子)では休校措置がとられた時点で、中2生、高3生はすでにiPadを所持していました。そこで、2019年4月からは長引く休校を見据え、オンラインでの指導を開始し、iPadを配布していない学年には、自宅のパソコンやスマートフォンを使って、課題の提出や、教材アプリの使用ができるように、まずは保護者にシステムの設定をしてもらったといいます。

オンライン授業といっても、一方的に動画を配信するだけでは、しっかりとした学習には結びつかないということで、共立女子では期限を設けて課題を提出させたり、オンラインでつないだ状態で小テストを行ったりといった取り組みも織り交ぜて、生徒の学習を支えました。

最初は課題提出から始め、さまざまなアプリやシステムを使って生徒とのつながりを作り、慣れてきてからは各教員が作った授業動画を配信しました。生徒がそれを見て、クラウド型の学習アプリや授業支援ツールなどを活用して課題に取り組んだり、先生に質問をしたり、という流れを構築しました。朝のホームルームはWeb会議システムを使用してリアルタイムで生徒の様子を確認し、先生方も互いに情報を共有しながら、きめ細かなフォローを行いました。

教員と生徒の授業支援ツール上のやりとり。生徒が提出してすぐに教員がアドバイスをすることで、より理解が深まります。

分散登校後もオンライン授業を実施し、取りこぼしのない学びを

2019年6月1日から分散登校がスタートしたものの、オンライン授業も継続していたとICT担当の髙梨裕樹先生はおっしゃいます。

中1生は学校に慣れるため毎日登校し、中1生以外は1日おきに3時間ずつ授業を行う分散登校を実施しました。これと並行してオンライン授業で各教科を学びつつ、登校時の授業では演習や確認、小テストを中心に行いました。

「今後第二波が来て全体登校ができなくなることも想定し、オンライン授業は継続していくことを学校全体で考えています。」 (髙梨先生)

中1生には毎日の宿題で学習リズムを作ってもらう

休校中の生徒へのフォローで最も気を使ったのは、やはり新中1生への対応です。生徒の安全を第一に考え、入学式を4月から6月に延期し、新中1生が学習への不安を感じないように、まずは郵送でオンライン授業に必要な資料をすべて送付しました。資料は先生方が総出で袋詰めをして、その様子をSNSでも発信しました。資料が届いてからは、まず保護者用のアカウントを学習アプリに登録してもらい、その後、生徒が保護者の助けを得ながらシステムにアクセスできるようにしました。先生方からの継続的なサポートで、6月の入学式では、新入生も不安なく新生活をスタートさせることができました。

「新入生にはまず、紙の資料を郵送するところから始めました。生徒たちのメールアカウントもすべて郵送し、紙の資料を見る形で保護者に入力してもらいました。また、サポートの電話も設置し、保護者の問い合わせに対応できるようにしました。最終的に全員がアクセスできるまで、2週間かかりました。」(中1担当/桑子研先生)

中1生に送るために、資料を一つひとつていねいに袋詰め。各家庭でシステムへアクセスできるよう詳細な資料を用意しました。

「最終的には体育や礼法などすべての教科から発信があり、休校中、分散登校時も合わせると、中1の課題が一番多かったくらいです。また、自己紹介の課題も出して生徒と何度もやりとりをしたので、登校時に対面した際はすでに生徒のことを担任がよく知っているという、うれしい現象もおきていました。」(中1学年主任/山本先生)

さらに、中1生へ向けて、ネイティブ教員とオンラインで英会話ができる時間も設定しました。フレンドリーに接するネイティブ教員に魅力を感じ、何度も参加する生徒もいて保護者にも非常に好評だったといいます。

理科を教える桑子研先生は、生徒が自宅でも試せるように、身近なものを使った実験動画を配信。教員間で現在も研究を重ね、効果的な動画授業のあり方を追究しています。

「今回、例えば動画などを生徒が自分のペースで繰り返し見ることによって、理解が深まるという意見もありました。今後に備え、先生方がオンラインのコンテンツを貯めていっている状況です。」(中学教務部主任/田部満先生)

今後も、必要であればオンラインをどんどん活用し、夏休み中の質問などにも対応していきたいとのこと。どんな状況になっても、生徒が学びを継続できるシステム作りをしていきたいという強い決意を示しています。

※この記事は『私立中高進学通信』2020年9月号に掲載された内容をもとに制作されています。先生方の役職などは取材当時のものです。