教育情報 「学習指導要領に定める目標に準拠した評価」の実現に向けて
観点別学習状況の評価の3観点と「指導と評価の一体化」

リリース日:2020年11月27日

「学習指導要領に定める目標に準拠した評価」の実現に向けて
観点別学習状況の評価の3観点と「指導と評価の一体化」

小学校

1.外国語教育で育成を目指す「資質・能力」の3つの柱

平成29年度改訂の小・中学校学習指導要領、平成30年度改訂の高等学校学習指導要領における外国語活動・外国語科では、他者とのコミュニケーション(対話や議論等)の基盤を形成するという観点が、「育成を目指す資質・能力」の全体を貫く軸として重視されています。さらにその「資質・能力」は、他教科と同様に、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、および「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱に基づいて整理されています(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」中央教育審議会、平成28年12月21日)。

これら3つの観点のうち、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」は、外国語で聞いたり読んだりして得た知識や情報、考えなどを的確に理解したり、それらを活用して適切に表現し伝え合ったりすることを通して育成されます。そのために「学びに向かう力、人間性等」を下支えとし、統合的な言語活動を一層重視しながら、目指す資質・能力を一体的に育む過程を実現させることが重要になります。新学習指導要領の各教科の「目標」は、以下にまとめられるように、「育成を目指す資質・能力」の3つの柱それぞれについて詳細かつ明確に示されています。

さらに新学習指導要領では、小・中・高等学校を通じて一貫した外国語教育の目標を実現するため、外国語学習の特性を踏まえて育成する「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力等」について、「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと [やり取り]」、「話すこと [発表]」、「書くこと」の5つの領域ごとに具体的な目標がまとめられています。つまり、高等学校卒業時に求められる資質・能力を明確にした上で、小・中・高等学校ごとに、児童生徒の発達段階に応じた形で領域別の目標を設定することにより、「段階的に」その資質・能力の育成を目指すことが分かります。各学校においては、国が学習指導要領に定めるこれらの領域別目標を踏まえ、児童生徒の学習状況や地域の実態などに合わせた具体的な学習到達目標を設定していくことになります。

2.学習指導要領に定める目標に準拠した学習状況の評価

新たな学習指導要領の下では、児童生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うと同時に、評価の場面や方法を工夫して、学習の過程や成果を評価すること、すなわち「授業の改善と評価の改善を両輪として行っていくこと」が求められます(「学習指導要領 総則編」)。

そして児童生徒の学習状況を分析的に捉える「観点別学習状況の評価」の観点として、小・中・高等学校の各教科を通じて「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の3つが設定されました。これらは上述の資質・能力の3つの柱に対応しますが、「学びに向かう力・人間性等」に示された資質・能力には感性や思いやりなど幅広いものが含まれるため、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分と、②観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(個人のよい点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取る部分があると述べられています(答申)。そのため観点別評価の観点としては、「主体的に学習に取り組む態度」とされています。このように外国語活動・外国語科において育成を目指す資質・能力、すなわち「外国語を使って何ができるようになるか」を3つの柱で明確にするだけでなく、学習を通して児童生徒に「何が身に付いたか」を評価するために同じ3つの観点を用いることで、「学習指導要領に定める目標に準拠した評価」の実質化を図ります。

これらの観点の関係性については、以下の資料に分かりやすくまとめられています。

3.観点別学習状況の評価の3観点

「知識・技能」

知識・技能」の観点では、学習指導要領の「知識及び技能」に記された内容の習得状況を評価します。その際、既有の知識及び技能との関連づけや、他の学習や生活の場面でも活用できる程度に習得しているかも評価します。ごく簡潔に述べれば、「~が好き」と伝えるためには“I like ~.”という表現が使えることを知識として知っているだけでなく、実際のコミュニケーション場面で相手に話したり書いたりして伝えることができるという技能が習得されているかを見取ります。その際、「ただ単語を適当に並べて意味が伝わればよい」とするのではなく、「表現の正確さ」を確認することにもなります。

ここで大切なのは、学校種ごとにその「正確さ」をどう捉えるかです。小学校外国語教育では、新たな表現を「文として」導入します。文を構成するための細かなルールについては触れず、コミュニケーションの「目的や場面、状況等」の整った中で、自然とその文の意味が分かるような形で提示します。さらに多くの表現に音声で慣れ親しんだり、文字を見たり書き写したりしながら「語順への気付き」を高めることも意図されています。それゆえ、小学校での「知識・技能」の評価では、児童が言語活動において「文の形で」伝えたいことを表現できているかどうかに焦点を当てる必要があります。その際、複数形や冠詞の有無といった細かな文法的誤りにとらわれることなく、コミュニケーションに支障のない程度、すなわち聞いて「意味が伝わる」ことを積極的に評価することが大切です。これを踏まえて中学校や高等学校の外国語教育では、文法規則を知識として習得しながら、創造的に文を産出する技能の習得を目指すことから、「文法規則に照らし合わせて判断される」表現の正確さにも焦点を当てて評価を行っていくことになります。

「思考・判断・表現」

思考・判断・表現」の観点では、「知識及び技能」を活用して課題を解決したりするために必要な「思考力、判断力、表現力等」を身に付けているかを評価します。そして、課題解決に向けて「より良い形で」思考、判断、表現しているかを見極めるためには、「何に照らし合わせて良いのか」を明確にしておく必要があります。それが、外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方に含まれる「コミュニケーションを行う目的や場面、状況等に応じて」という部分が意図することです。すなわち、言語活動を通して児童に思考力、判断力、表現力を働かせるためには、その言語活動の「目的や場面、状況等」がイメージしやすいように設定され、それを指導者と児童生徒が具体的に共有できていることが必要条件であることが分かります。

言語活動において、児童生徒の「思考力、判断力、表現力等」が機能していれば、それは伝え合う内容に現れるはずです。その内容が「コミュニケーションの目的、場面、状況等に応じてどの程度適切であるか」が、この観点の評価として表れることになります。

「主体的に学習に取り組む態度」

主体的に学習に取り組む態度」の観点では、①知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けて、児童が粘り強い取組を行おうとしているか、および②その粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとしているか、という2つの側面を評価するとされています。①については、単に授業中の発言や挙手などの「積極性」をその回数などの量的な指標だけで見取るのではありません。育成すべき資質・能力の3つ目の柱「学びに向かう力、人間性」に関する学習指導要領の「外国語」の目標(例えば小学校であれば「外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。」)を踏まえれば、言語活動を通して児童生徒が何を思考し、判断し、表現するかに深く関わることが分かります。それゆえ、「主体的に学習に取り組む態度」の観点は、「思考、判断、表現」の観点と一体的に見取ることも可能であるとされています。さらに②については、それぞれの児童生徒が行う学習調整が「適切に行われているか」を判断するのではなく、それが知識及び技能の習得に結び付くように指導者が学習の進め方を適切に指導することが大切であることを意識しておかねばなりません。

4.「指導と評価の一体化」に向けて

上述の答申には「学習評価の意義等」として、「学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにする」、「教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかどうかを捉えていくことが必要」と述べられていることです。すなわち学習評価は、外国語教育の特性や児童の発達の段階を考慮しながら、一人一人の学びの過程における現在の学習状況を的確に把握するものであるだけでなく、自分で学びを振り返るきっかけ、動機づけ、方向づけとなり、教員にとっても指導改善の根拠となるものでなくてはなりません。成果物(パフォーマンス)だけでなく、学びの過程を評価していくことが大切です。そのための評価方法の理解や選択、工夫が求められていることを、常に意識していきたいものです。

具体的には、「学びの過程」を通じた評価という点に着目し、毎回の授業の中で児童生徒のパフォーマンスを見取ることに慣れていくとよいと思います。そのために必要なのは、授業はじめに「今日はどのようなことができるようになるのか」というCAN-DO形式の目標を指導者と児童生徒で共有し、授業終わりにワークシートに取り組んだり、振り返りシートを記入したりする間に、指導者やALTが教室を回り、児童生徒と一対一で対話を行って評価を記録する方法もあります。その際、「今日の自分の対話はどのように評価されたかが分かる」ように、先立って目指す姿を具体的に確認しておきます。さらに、複数の単元を終えたら、「これまでに外国語の授業を通して英語でどのようなことができるようになったのか」を改めてリストで確認し、それら全てを生かせるようなタスクを設定しながら、少し長めのパフォーマンス評価を組み込んでいくとよいでしょう。日々の授業中の観察法のみによる見取りでは、その観点がぶれたり、児童が「今どのような観点から評価されているのか」が分からないことがあります。だからこそ、意図的、明示的な目標共有とそれに基づく評価を少しずつ初めていく。これが新たな学習状況の評価に向けた3観点を貫くCAN-DO評価に繋がります。

これからの評価のあり方については、国立教育政策研究所から出された学校種ごとの「「指導と評価の一体化のための」学習評価に関する参考資料」を熟読し、具体的なイメージを構築することで理解が深めることができます。高等学校の評価のあり方についても2020年度中に加わります。「育成を目指す資質・能力の3つの柱」に対応した3つの観点別評価の観点はすべての教科に共通ですが、外国語活動・外国語としての「指導と評価の一体化」の実現を指導者として目指すことが重要です。



愛知県立大学 外国語学部 教授 池田周先生
新学習指導要領 外国語シリーズ 教育情報

第1回:「小学校学習指導要領(平成29年度告示)」全面実施を迎えて(リリース日:2020年6月10日)

第2回:言語材料の導入と言語活動における「目的、場面、状況等」の設定(リリース日:2020年8月3日)

第3回:外国語教育の「小中接続」で大切にしたいこと(リリース日:2020年9月3日)

第4回:「主体的・対話的で深い学び」の実現(リリース日:2020年10月9日)

第5回:「学習指導要領に定める目標に準拠した評価」の実現に向けて:観点別学習状況の評価の3観点と「指導と評価の一体化」(リリース日:2020年11月27日)

池田周先生プロフィール

愛知県立大学外国語学部教授。英国Warwick大学博士課程修了。博士(英語教育・応用言語学)。
小学校英語教育学会(JES)愛知支部理事。文部科学省「小学校の新たな外国語教育における補助教材の検証及び新教材の開発に関する検討委員会」委員を努めた。
大学では小学校および中・高等学校英語科の教員養成課程に携わり、学校現場での教員研修・セミナー等も数多く担当。