教育情報 「主体的・対話的で深い学び」の実現

リリース日:2020年10月9日

「主体的・対話的で深い学び」 の実現

小学校

2020年度は「新しい生活様式」の中で、学びの場面にもさまざまな変化が生まれています。遠隔授業の試みやICTを活用した「学びかた」の変化は、その代表的な例です。また対面授業でも、ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用などにより「児童生徒同士のコミュニケーションをどのように工夫するか」という課題が生まれています。こうした中、改めて気づかされることがあります。これまでの英語授業改善を通して、「ペアやグループ活動が、ごく当然に取り入れられるようになっている」という事実です。児童生徒が英語でやり取りしようとする姿がふつうに見られるようになり、授業が実際の「コミュニケーションの場」となるような取組も増えています。だからこそ、ペアやグループ活動に制約がある今、多くの先生方が「可能な学びの形」を模索しておられます。今回は、新課程において求められる「学び」を表す1つのキーワードを取り上げ、考えてみたいと思います。

授業改善の視点としての「主体的・対話的で深い学び」

今年度から小学校、来年度は中学校、再来年度には高等学校で学年順に始まる新たな教育課程では、「主体的・対話的で深い学び」の実現(「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)を目指すことになっています。これには「学びの質」に着目した授業改善に向けた学習指導要領の6つの「枠組」(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」、中央教育審議会、平成28年12月21日)〔以下再掲〕のうち、授業における具体的な児童生徒の学びの姿を表す ③「どのように学ぶか」という視点が関係しています。すなわち「主体的・対話的で深い学び」は、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成するための授業改善の視点として実現が求められるものです。

「学びの質」に着目した授業改善に向けた学習指導要領の「枠組」
①「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力)
②「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた 教育課程の編成)
③「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)
④「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導)
⑤「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
⑥「実施するために何が必要か」(学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)

また「主体的・対話的で深い学び」の実現は、「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善と説明されていますが、「主体的・対話的で深い学び」と「アクティブ・ラーニング」は同一ではありません。

「主体的・対話的で深い学び」は、学びの本質として重要な、以下3つの固有の視点から成ります。

① 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」

② 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」

③ 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」

このうち①「主体的な学び」と②「対話的な学び」については、指導や学習の「型」の部分で「アクティブ・ラーニング」と重なります。そして ③「深い学び」の視点に、特に「学びの質」に着目した授業改善の特徴を濃く読み取ることができます。小・中・高等学校の学習指導要領解説「総則編」によると、「深い学び」には、教科ごとの「見方・考え方」を働かせることが必要です。

「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」
外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること

外国語活動・外国語科の「見方・考え方」では、様々な言語や文化、社会についての知識や技能を身に付け、既習の知識・情報等と関連づけて深く理解し、特にコミュニケーションの「目的や場面、状況等」に応じて相手への十分な配慮を行いながら活用し、思考や判断、表現できるようになることを目指します。従って、授業で行う言語活動には必ず「目的、場面、状況」が設定されていなくてはなりません。それらに応じて「何のために」、「どういう場面で」、「どのような状況、条件を考慮しながら」、「どういう相手に対して」英語でコミュニケーションを行うのかを理解し、適切な言語運用を目指します。

「主体的・対話的な深い学び」の実現には教師の支援が必要

上述のように、「主体的・対話的で深い学び」は、「学びの質的な深まり」に注目した授業改善を行うための視点です。その実現において、教師はそれが目指すものを十分に理解した上で、児童生徒一人一人の興味や関心、能力や適性、発達や学習の課題などを踏まえながら、英語教員としての専門的知識・技能を生かして「学びに関わる(=支援する)」ことが求められます。この「支援」について、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説「外国語編 英語編」」では、以下のような説明があります。

小学校及び中学校の学習指導要領においては,例えば,「聞くこと」の目標では,「ゆっくりはっきりと話された際に」(小学校外国語活動),「ゆっくりはっきりと話されれば」(小学校外国語科),「はっきりと話されれば」(中学校外国語科)などのように,児童生徒の学習の段階に応じた条件を具体的に示している。一方,高等学校では,外国語科で扱う内容が高度化・複雑化し,各科目ごとに目標とする水準が異なることを踏まえ,実際のコミュニケーションの過程で考えられる様々な配慮などを,目標において「支援」と総称することとした。

さらに、言語活動を行う際の支援として以下①~⑤の例を挙げ、これらを生徒の学習過程のあらゆる段階で与えることが可能であり、生徒の実態や学習過程における必要性に応じて柔軟に工夫することが必要であると述べられています。

① 話す速度を落としたり,一度にたくさんの情報を伝えるのではなく分けて伝えたりする(「聞くこと」)
② 理解が難しい語彙や表現が含まれている場合に簡単なものに書き換える(「読むこと」)
③ 対話の例を示すため教師が実際のやり取りを見せる(「話すこと[やり取り]」)
④ 発表の事前準備として,グループで話し合わせたり,アウトラインを書かせたりする (「話すこと[発表]」)
⑤ 書く活動を行うに当たって有用な語彙や表現を示す(「書くこと」),など

このように5領域の学習過程に関連するだけでも、活動の認知的負荷の調整や教材の検討など、様々な支援の形があることが分かります。ですが、英語科の授業を担当する教師が「自身の専門性を生かしながら行う支援」として重要なのは、学習対象でもある英語、すなわち「ことば」を用いて児童生徒の学びの過程に関わることだと考えます。授業中の学習事項の提示、説明、発問、指示、理解の確認などを意図した様々な教師発話によって、学びの質的な深まりを促すことができます。

その一方、ペアやグループでの児童生徒の自主的な活動を尊重するあまり、教師が意図的に関与を控えようとする様子がうかがえることがあります。学びの目標によっては、これもひとつの指導の形です。しかし「深い学び」の実現を目指すには、そのための言語活動において、教師発話による支援を積極的に行うことが大切です。この「積極的」とは、単に教師の発話の「頻度が高く」「量が多い」ことだけを表わすのではありません。学びの目標や児童生徒の習得状況に応じて「適切な」支援を「常に考え判断しながら」指導に組み込んでいくという意味です。

児童生徒の英語の習得段階によっては、支援が母語である日本語で行われることも考えられますが、次第に、「英語のまま」の語りかけや問いかけが支援として機能するように指導を行うことも大切です。そしていずれは支援の頻度が減り、質的にも関与の度合いが下がった状態でも、児童生徒が言語活動をこなせるようになること。これにつながる指導計画や学習過程の調整も、「主体的・対話的で深い学び」の実現につながるのです。

引用元:文部科学省

池田周先生プロフィール

愛知県立大学外国語学部教授。英国Warwick大学博士課程修了。博士(英語教育・応用言語学)。
小学校英語教育学会(JES)愛知支部理事。文部科学省「小学校の新たな外国語教育における補助教材の検証及び新教材の開発に関する検討委員会」委員を努めた。
大学では小学校および中・高等学校英語科の教員養成課程に携わり、学校現場での教員研修・セミナー等も数多く担当。