教育情報 新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!
【第3回 高校入試編】

リリース日:2019年10月24日

新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!【第3回 高校入試編】

中学校

2020年度以降に実施される新学習指導要領では、小・中・高一貫した外国語教育の抜本的強化に向けて、各段階を通じて「聞く」「読む」「話す(やり取り:interaction)」「話す(発表:production)」「書く」ことの4技能5領域(小学校中学年では2技能3領域)をよりバランスよく育成し、実際のコミュニケーションに取り組んでいけるような力を重視。大学入試でも4技能を評価することになった。

各段階の新学習指導要領における変更点のポイント、そして外国語教育における留意点などについて、第1回小学校、第2回中学校、第3回高校入試、第4回高校、第5回大学受験に分けて解説していく。

これからの高校入試では「話す」ことも求められる

高校で新学習指導要領が順次実施される2022年度以降に先駆けて、すでに教育改革の趣旨を取り入れた出題をする都道府県が多くあり、都道府県の高校入試でも教育改革で示された「思考力・判断力・表現力」を問う新傾向の問題が出題され始めている。

英語では、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)を重視する新学習指導要領に変わろうとしている中、入試問題も4技能を評価する方向に変化しつつあり、そのための措置として大学入試のように英検などの民間検定の結果を反映するケースも見られる。

例えば大阪府では、すでに2017年度入試から大改革に取り組んでおり、全体の配点に占める比率を「聞く」は約20%から約33%へ、「書く」は約8%から約20%へ変更し、両者を合わせて50%を超えることし、同時に、「書く」は自分の考えを英語でまとめるような思考力を問うライティング問題を意味し、機械的な和文英訳問題は除くとした。さらに、英検とTOEFL iBT、IELTSの3つの外部試験も導入している。

また、福井県では2018年度入試において、外部試験を導入して「話す」力を測定すると発表。英検の取得級に応じた加点措置が導入された。このような傾向はますます広がりを見せるだろう。

従来の難しいとされてきた「話す」能力をいかに評価するかという議論を慎重に重ねてきた東京都では、2019年2月、都内公立中学校3年生等を対象に、民間資格・検定試験を活用した「東京都中学校英語スピーキングテスト(仮称)」を実施することを発表している。

「読む」「書く」「聞く」の内容に大きな変化が

「話す」ことについての評価が始まるのに加え注意しておきたいのが、「書く」「読む」「聞く」の内容の変化である。

「書く」ことに関しては、先ほど紹介した大阪府の改革の内容にもあったように、正しい文章を書ければいいということではなく、これまでに学習した語彙・文法を正しく用いて、自分の考えを書かせることが求められる傾向にある。

「読む」「聞く」に関しては、学校生活や旅行などの受験生の生活に身近なテーマのみならず、社会問題・環境問題、政治、文化など、より深い思考力が試される内容が多く出題されている。また多くの都道府県でリスニング問題の配点比率を従来よりも高く設定する傾向がある。

ここで一つ注意したいのは、まもなく高校入試を迎える2020年度受験生(現在中3の生徒)である。中学校で新学習指導要領が全面実施となるのは2021年度からで、2018年度~2020年度は移行期間とされ、従来の学習指導要領で学んでいる。

つまり、2020年度受験生(現在中3の生徒)従来の学習指導要領の内容を学ぶことになるが、目前に迫る高校入試には新傾向の出題に対策していく必要がある。

そもそも出題の傾向や制度には各都道府県によって違いがあり、教育改革への対応にも違いがある。今後、中学における進路指導をするうえで、各都道府県の制度とあわせて最新の傾向を常に把握しておく必要があるだろう。