教育情報 「大学入試英語成績提供システム」利用大学が決定
各大学が活用方針を発表

リリース日:2019年10月11日

「大学入試英語成績提供システム」利用大学が決定
各大学が活用方針を発表

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本原稿は、2019年10月11日に掲載した記事です。

2019年10月4日、文部科学省は「大学入試英語成績提供システム」利用予定大学の一覧(9月30日時点)を発表。続く7日に、利用予定大学の活用状況についての一覧を大学入試英語ポータルサイト※に掲載した。

システム利用大学一覧はこちら

利用予定大学数は561校(利用予定割合は52.5%)、うち国立77校(93.9%)、公立71学校(78.0%)、私立は335校(57.1%)、短大78校(25.3%)となった。(方針を未公表する大学の一部は10月11日までに解答)

全体で半数以上の大学が利用予定としたが、国公立大学では、北海道大、東北大が利用を見送り。利用予定の大学についても、東京大学では「大学入試英語成績提供システム」の参加要件を満たすと確認された民間の英語試験に代わるものとして、「CEFR の A2 レベル以上に相当する英語力があると認められることが明記されている調査書等、高等学校による証明書類」であっても出願要件に認めることを表明。京都大学でも同様の方針を示している。

私立大学では、青山学院、上智、東京理科、立教、早稲田、同志社、立命館といった半数以上の大学が利用予定とした一方、慶應義塾、明治、法政、学習院といった大学が利用を見送るとしている。

「大学入試英語成績提供システム」は、国が大学入学共通テストでの民間英語資格・検定試験の活用を推進するために、大学入試センターが2020年4月から運営をスタートするシステム。受験生は、大学入試センターが発行するコード(共通ID)を取得※、共通IDを記入して資格・検定試験を受験する※ことで大学入試センターが試験の結果を集約・管理し、大学の求めに応じて提供するというものだ。

※在学者は学校経由で申込みをして取得
※成績の提供は大学を受験する年度の4月から12月までの期間で2回まで

「大学入試英語成績提供システム」の成績提供の対象となる資格・検定試験は、今年7月にTOEICが「運営が複雑で責任を持って対応を進めるのが困難」として参加を取りやめたことで物議を呼んだが、2021年の大学入学共通テストでは6団体が行う22試験が決定した。各試験の実施日程などはこちらから確認できる。(2019年8月末発表)

民間試験の導入をめぐって懸念も

「大学入試英語成績提供システム」によって、大学入試センターが一括して民間試験の成績を管理・提供するため、手続きの効率化などのメリットがある一方で、さまざまな不安の声も上がっている。

「複雑すぎてどの民間試験を受けたらいいのかわからない」という受験生は少なくない。どの民間試験を受験するかは受験生が選べるが、各試験の目的・特徴や実施概要はさまざまで、対策方法が異なる。
※文部科学省の取りまとめによる各資格・検定試験の実施概要(2019年8月時点)

「大学入試英語成績提供システム」の利用を表明している大学においても、その結果をどのように活用するかは各大学によってばらばらで、自分が希望する大学に焦点を絞って効率的に対策していくために、受験生は入試要項や各大学・学部の入試における英語成績提供システムの活用方針、さらに、各民間試験の特徴を把握しなくてはならない。

「大学入試英語成績提供システム」の活用方針の違いによって各大学の入試傾向の差が開いていけば、それだけ個別の試験の対策に追われることになり、併願大学の選択も複雑になっていくだろう。

また、不平等を懸念する声も上がっている。「大学入試英語成績提供システム」では、受験する年度の4~12月に実施される民間英語資格・検定試験の結果のうち、2回分が採用される。受験する年度の前から対策として何度も検定試験を受けることができれば、受験対策として功を奏する。しかし民間試験の検定費用は、6,000円前後のものから20,000円以上まであり、費用面の負担は決して小さくない。

高校での英語4技能の習得に向けた授業や学習が、結果的に民間試験に向けた対策となるのであれば望ましいが、現状では、高校で生徒が受ける民間試験に個別に対策していくことは難しいだろう。

情報提供や周知が遅れたために混乱や不安が広がる中、現在の高校2年生は、2020年1月には「大学入試英語成績提供システム」の共通IDを取得し、4月から民間試験にチャレンジしていくことになる。

全国高等学校長協会※では、7月25日に「大学入試に活用する英語4技能検定に対する高校側の不安解消に向けて」の要望書を文部科学省に提出したのに続き、“先を見通せない混乱状況が続く中にあって、各学校は本格的に生徒に対して検定試験の受験に向けての指導を開始せざるを得ないという大変厳しい状況に追い込まれている”として、9月10日には英語4技能検定の延期及び制度の見直しを求める要望書を提出した。

※全国高等学校長協会の要望書はこちら

こうした要望に応じて、システムの運用が目前に迫る中、ようやく民間試験の活用に関する情報が整理されつつあるが、課題はいまだに多い。先生方には、受験生が安心して受験に臨めるようサポートが求められていくだろう。