教育情報 新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!
【第2回 中学校編】

リリース日:2019年10月10日

新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!【第2回 中学校編】

中学校

2020年度以降に実施される新学習指導要領では、小・中・高一貫した外国語教育の抜本的強化に向けて、各段階を通じて「聞く」「読む」「話す(やり取り:interaction)」「話す(発表:production)」「書く」ことの4技能5領域(小学校中学年では2技能3領域)をよりバランスよく育成し、実際のコミュニケーションに取り組んでいけるような力を重視。大学入試でも4技能を評価することになった。

各段階の新学習指導要領における変更点のポイント、そして外国語教育における留意点などについて、第1回小学校、第2回中学校、第3回高校入試、第4回高校、第5回大学受験に分けて解説していく。

新学習指導要領で中学校の英語教育はどう変わるのか

中学校で新学習指導要領が全面実施となるのは2021年度から。文部科学省では、その変更のポイントとして、①各学校段階の学びを接続させるとともに②「外国語を使って何ができるようになるか」を明確にするという観点から改善・充実を図ることを明示した。そのうえで、学習内容の改善点として次の3点がされた。

・語数について…現行の1,200語から小学校で学習した語に1,600~1,800語程度の新語を加えた語に大幅に増加。
・文法について…主語+動詞+目的語+原形不定詞」、「現在完了進行形」、「仮定法」など、現行では高等学校の学習指導要領で扱っていた内容が追加される。
・これまでの「聞く」「話す」「読む」「書く」の4 技能4 領域に、「話す(やり取り)」の領域を設定。語、文法事項などと具体的な使用場面をに関連付けて指導し、実際に活用する言語活動を充実させる。

ここで注目したいのは今回の改訂で新たに設定された領域「話すこと(やり取り)」である。この領域では、関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うこと ができるようにすることを目標とする。

「即興で伝え合う」とは、原稿を事前に用意したり、暗記した文章を読み上げるのではなく、相手の発話にごく自然に応じて意見を述べたりして、互いに協力して対話を継続・発展させていくことである。

その目標達成に向けて、これからの授業ではペア・ワークなどで生徒が英語で言語活動をする場面を増やし、スポーツ・音楽・映画・テレビ番組・学校行事・休日の計画・日常の出来事など、生徒の関心が高いことや身の回りのことをテーマとして扱うことが求められる。

そこで文部科学省では、授業は英語で行うことを基本とすることや、ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得ることにも言及している。

ここで大切なのは生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすることだ。また、授業で生徒の関心や身の回りの出来事を題材として扱うには、生徒たち教の間に共通理解をつくっていかなければならない。

これらを留意していくと、これからの英語教育において、日本人の先生が果たす役割は大きい。外国語として英語を学んきた経験を持つ日本人教師ならではの指導ができる。また、日本ならではの文化背景を理解した上での指導は、日本人の先生だからこそできるものである。

小学校の移行期間中の取り組みに各校でばらつきがあり、英語必修化が前倒しされたことですでに英語を苦手とする生徒がいるという懸念もある。そのなかで、生徒一人ひとりへの理解を深めていく教室運営がより一層重要になっていくだろう。

中学校・高等学校における英語教育の状況

文部科学省では、研修や教職課程の改善なども課題にあげている。

ここで、例年文部科学省が実施している平成30年度「英語教育実施状況調査」※の結果を見てみよう。調査対象は全国9,374の中学校。

同調査の授業における「生徒の英語による言語活動時間の割合」および「授業における、英語担当教師の英語の使用状況」をみると、授業時間中における言語活動や発話使用状況が75%以上という教員は半数にも満たない。

文部科学省では、英語力・英語指導力を強化するために、自治体における研修を補助する取り組みを始めるとともに、英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級程度又はTOEFL iBT80点程度以上等)としている。

教職課程においても「教職に関する科目」では、発表・討論・交渉等の言語活動の充実に対応し、模擬授業や教材研究等を充実すること。そして英語教師を志す人に海外での留学を通じて、英語力・指導力を高めるとともに、異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることも推奨している。

今後は、現職の先生の多くが、自分が受けてきた英語教育とは異なる方法で指導や評価を行うことなる。普段から先生自身が、実際の生活の中で英語がどのように使われているのかを示しながら教えていく必要がある。