教育情報 新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!
【第1回 小学校編】
リリース日:2019年9月26日
新学習指導要領で英語教育はこんなに変わる!【第1回 小学校編】
2020年度以降に実施される新学習指導要領では、小・中・高一貫した外国語教育の抜本的強化に向けて、各段階を通じて「聞く」「読む」「話す(やり取り:interaction)」「話す(発表:production)」「書く」ことの4技能5領域(小学校中学年では2技能3領域)をよりバランスよく育成し、実際のコミュニケーションに取り組んでいけるような力を重視。大学入試でも4技能を評価することになった。
各段階の新学習指導要領における変更点のポイント、そして外国語教育における留意点などについて、第1回小学校、第2回中学校、第3回高校、第4回高校入試、第5回大学受験に分けて解説していく。
新学習指導要領で小学校の英語教育はどう変わるのか
2020年以降の小学校英語教育の主な変更点は、これまで小学校5・6年で行われていた「外国語活動」が、小学校3・4年に早まること。また小学校5・6年に「外国語」が教科として設けられ、成績評価も数値化されるようになることだ。
【小学校3・4年】
総合的な学習の時間などを使って外国語活動を実施(学校や地域などによって内容は異なる)
⇒2020年度以降:すべての公立小学校で週1コマ年間35コマの「外国語活動」を実施
【小学校5・6年】
週1コマ 年間35コマの「外国語活動」を実施
⇒2020年度以降:週2コマ年間70コマの「外国語」を“教科”として設置
新学習指導要領対応教材で見る2020年以降の英語教育のポイント
新学習指導要領改訂のポイントは、3・4年の「外国語活動」の導入によって「聞く」「話す」を中心に英語に慣れ親しんだうえで、5・6年の「外国語」では、「聞く」「話す」に段階的に「読む」「書く」を加え、中学校での学習へつなげていくというものだ。
その具体的な内容について、文部科学省が作成した新学習指導要領対応の教材『Let's Try!(3・4年用)』と『We Can!(小学校5・6年用)』を見ていこう。
『Let's Try!』は、小学3・4年の外国語活動の目標を反映し、次のように、「聞く」「話す」の言語活動を通してコミュニケーションを図る素地を育成する内容となっている。
『Let's Try!』は、小学3・4年の外国語活動の目標を反映し、次のように、「聞く」「話す」の言語活動を通してコミュニケーションを図る素地を育成する内容となっている。
・【Let’s Watch and Think】映像を見ながら英語でまとまりのある話を聞き、英語の意味を推測したり捉えたりする。また、聞き取った内容の質問に答える。
・【Let’s chat】【Let’s Sing】設定された表現について、英語のリズムやイントネーションに自然に慣れ親しむ。
・【Let’s Listen】英語の音声を聞いて、必要な情報を聞き取ったり概要を捉えたりする。
・【Let’s Play】英語の音声を繰り返し聞いたり言ったりして、慣れ親しむ。
・【Activity】本単元で学習した表現などを使って、友達と自分の思いや考え方を伝え合って表現する。
ー文部科学省ホームページ「新学習指導要領に対応した小学校外国語教育新教材について」平成30年9月26日より
次に、『We Can!』は「聞く」「話す」からスタートし、「読む」「書く」に取り組みながら、代名詞(三人称)、動名詞、過去形などを含む表現に繰り返し触れられるように構成されている。
例えば『We Can!②』(小6)unit5「My Summer Vacation」は次の内容で構成される。
・【Let’s Play】英語の音声を繰り返し聞いたり言ったりして、段階的に使えるようにする。
・【Let’s chat】設定された表現について、英語のリズムやイントネーションに自然に慣れ親しむ。ほかに、【Let’s Sing】もある。また、夏休み明けの授業で、夏休みを題材に取り上げ、行ったところや食べたもの、楽しかったことなどを伝え合う中で、過去形の表現を扱う。
・【Let’s Watch and Think】映像を見ながら英語でまとまりのある話を聞き、英語の意味を推測したり捉えたりする。また、聞き取った内容の質問に答える。
・【Let’s Listen】英語の音声を聞いて、必要な情報を聞き取ったり、質問に答えたりする。
・【Let’s Read and Watch】これまでに聞いたり言ったりして音声で十分に慣れ親しんだ表現が書かれたものを読んで、その内容を捉える。
・【Activity】本単元で学習した表現などを使って、友達と自分の思いや考え方を伝え合ってコミュニケーションする。
・【Let’s Read and Write】ワークシートに、語順を意識しながら、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写したり、友達が書いた文章を読んだりする。
・【STORY TIME】英語の自然な音声を繰り返し聞き、その意味を絵を手掛かりに推測したり、文字と結び付けたり、単語や文、語順などの認識を深めたりする。また、同じ韻を踏む単語を続けて聞くことで、文字と発音の関係に気付く。
ー文部科学省ホームページ「新学習指導要領に対応した小学校外国語教育新教材について」平成30年9月26日より
また新学習指導要領では、小5・6年に『Small Talk』という活動が新たに設置される。2時間に1回程度、教員が英語であるテーマについて語り聞かせ、小5ではその内容を捉えること、小6では生徒同士がペアになって意見交換をするというものだ。
その目的として、既習表現を繰り返し使用できるようにしてその定着を図ること、対話を続けるための基本的な表現の定着を図ること、が示されている。
以上のように、これからの外国語教育は、これまでの“文法を学び、単語や例文を覚える”といった学習順序から、自分の思いや考え方を伝え合う言語活動から英語を学んでいくように、大きく変化することがわかる。
教材の児童用冊子、教師用指導書、学習指導案例や年間指導計画例などは文部科学省のホームページでも公表されている。また、YouTubeの公式チャンネルでは教員用の研修動画のほかに、ここで紹介したSmall Talkの音源も聞くことができる。
これからの英語教育の大きな変化に対応するために、ぜひこうした活動を役立てていきたい。
構成・執筆/笠原 紗由香